敷金の返還はいつ?
流れ・計算例・請求書の書き方【完全ガイド】
敷金返還の法的根拠から、返還までの流れと期限の目安、返還額の計算方法、返還されない・少ないときの交渉手順、敷金返還請求書の書き方までまとめて解説します。年間9,787件の退去対応実績を持つスム住むが、管理会社様・オーナー様にも入居者様にも分かりやすくご案内します。
原状回復・退去立会いの無料見積もり敷金とは?返還の法的根拠(民法622条の2)
敷金とは、賃貸借契約を結ぶ際に借主が貸主に預ける金銭で、家賃の滞納や退去時の原状回復費用など、借主が負うべき債務を担保する役割を持つものです。「預ける」お金である以上、契約が終了して物件を明け渡したときには、差し引くべき理由がない部分は借主に返還されるのが本来の姿です。
このルールは長らく判例や慣習にゆだねられてきましたが、2020年4月に施行された改正民法によって明文化されました。改正民法622条の2では、敷金の定義とあわせて、賃貸借契約が終了し、かつ貸主が物件の返還を受けたときに、未払賃料などの債務を差し引いた残額を借主に返還しなければならないことが定められています。つまり敷金は、法律上「原則として返還されるお金」であることがはっきりと位置づけられているわけです。
あわせて押さえておきたいのが、原状回復の負担区分に関するルールです。同じく2020年4月施行の改正民法621条では、借主は「通常の使用収益によって生じた損耗」と「経年変化」については原状回復義務を負わないと明記されました。何を根拠にどこまで借主負担にできるかについては、国土交通省が公表している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(最新は2011年8月の再改訂版)が実務上の基準として広く使われています。ガイドラインの負担区分の考え方は次の章で詳しく説明します。
なお、敷金の返還請求権は、契約終了後いつまでも行使できるわけではありません。一般の債権と同様に時効の考え方が関係してくるため、返還に納得がいかない場合は早めに行動を起こすことが大切です。
敷金が返還されるまでの流れと期限の目安
敷金は、解約の申し出から返還の振込まで、いくつかの段階を経て手続きが進みます。退去者本人が動くべきタイミングを把握しておくと、返還が遅れたときにもすぐ状況を確認できます。
| 段階 | 内容 | 目安の時期 |
|---|---|---|
| 1. 解約通知 | 契約書所定の予告期間(1ヶ月前予告が多い)に従い、貸主・管理会社へ解約を通知します。 | 退去希望日の1ヶ月前が目安 |
| 2. 退去立会い | 退去日に室内の状態を貸主側と借主が一緒に確認します。損耗の箇所と原因をその場で確認し、写真に残しておくと後の交渉で役立ちます。 | 退去日当日 |
| 3. 原状回復費用の算定 | 立会い結果をもとに、借主負担となる工事の範囲と金額が算定されます。 | 退去後1〜2週間程度 |
| 4. 敷金精算書の交付 | 控除内訳と返還額をまとめた精算書が借主へ交付されます。内容に疑問があればこの段階で確認します。 | 退去後2週間〜1ヶ月程度 |
| 5. 返還振込 | 内容が確定したら、指定口座へ返還金が振り込まれます。 | 退去後1ヶ月程度が一般的 |
返還期限はいつまで?
敷金の返還期限そのものを定めた法律の明文規定はありません。民法622条の2が定めているのは「契約が終了し、物件の返還を受けたときに返還義務が生じる」ことまでで、具体的な日数までは規定されていません。実務では賃貸借契約書に「退去後○日以内に返還する」といった条項が置かれていることが多く、契約書に定めがない場合でも、退去後1ヶ月程度で返還されるのが一般的とされています。まずは契約書の返還条項を確認し、1ヶ月を大きく超えても連絡がない場合は管理会社に問い合わせてみましょう。
返還までの期間は、退去立会いの内容によっても左右されます。立会いでの確認があいまいだと、後から追加の控除項目が出てきて精算が長引くこともあります。スム住むでは、管理会社様・オーナー様に代わって専門スタッフが立会いを行う退去立会代行を提供しており、原状回復工事をご依頼いただく場合は立会代行が完全無料です。
敷金返還額はどう決まる?計算方法と負担区分
敷金の返還額は、次の式で計算するのが基本です。
ポイントは、控除できるのが「借主負担の原状回復費用」に限られる点です。経年劣化や通常の使用による損耗は貸主負担が原則であり、敷金から差し引くことはできません。国土交通省ガイドラインに基づく負担区分の代表例は次のとおりです。
| 損耗の例 | 負担区分 | 考え方 |
|---|---|---|
| 日照による壁紙の変色、家具の設置跡、画鋲の穴程度 | 貸主負担 | 経年変化・通常の使用による損耗にあたるため |
| タバコのヤニ・臭い、ペットによる傷 | 借主負担 | 故意・過失や善管注意義務違反にあたるため |
| 結露を放置したことによるカビ、飲みこぼしのシミ | 借主負担 | 手入れを怠った過失にあたるため |
借主負担になる場合でも、金額の算定には2つの重要なルールがあります。1つ目は経過年数(耐用年数)の考慮です。壁紙(クロス)やクッションフロアは耐用年数6年とされ、6年を経過すると残存価値は1円まで下がるため、入居期間が長いほど借主負担額は小さくなります。フローリングは部分補修の場合、経過年数を考慮しない扱いです。畳表や襖紙は消耗品として、いずれも経過年数を考慮しません。2つ目は「善管注意義務違反箇所を含む最小施工単位」が原則という点です。壁1面のシミを理由に部屋全体のクロス張替え費用を全額請求するのは、不当とされるケースがあります。
実際の計算例として、敷金15万円を預かっていたケースで見てみましょう。
| 項目 | 内容 | 金額 |
|---|---|---|
| 敷金預かり額 | 契約時に預けた敷金 | 150,000円 |
| 未払賃料 | 滞納・日割精算分 | 0円 |
| クロス張替え(借主負担分) | 飲みこぼしのシミによる壁1面の張替え(経過年数考慮後) | 15,000円 |
| 控除合計 | − | 15,000円 |
| 返還額 | − | 135,000円 |
特約(ハウスクリーニング特約など)による控除は、賃借人が負う義務の内容が契約書に具体的に明記され、通常の原状回復義務を超える負担であることを認識したうえで合意している場合に限り有効とされています。精算内容に特約の控除が含まれている場合は、契約書の該当条項を確認してみましょう。負担区分のより詳しい考え方は原状回復ガイドライン完全解説で具体例とともに紹介しています。
敷金が返還されない・少ないときの交渉ステップ
精算内容を見て「返還額が少ない」「そもそも返還の連絡がない」と感じたときは、感情的に抗議するよりも、順序立てて確認と交渉を進めるほうが解決への近道です。次の4段階で対応しましょう。
| STEP | 行動 | ポイント |
|---|---|---|
| STEP1 | ガイドラインと契約書を確認する | 控除項目が経年劣化・通常損耗にあたらないか、国土交通省ガイドラインの負担区分と照らし合わせます。特約による控除がある場合は契約書の該当条項も確認します。 |
| STEP2 | 管理会社・貸主に根拠を確認して交渉する | 「どの損耗に対する費用か」「借主負担とする根拠は何か」を書面やメールで確認し、やり取りは記録に残します。 |
| STEP3 | 消費生活センターに相談する(188) | 当事者間で解決しない場合、消費者ホットライン「188」に電話すると最寄りの消費生活センターにつながり、無料で助言やあっせんを受けられます。 |
| STEP4 | 少額訴訟を検討する | それでも解決しない場合、60万円以下の金銭請求であれば簡易裁判所の少額訴訟という手続きが選択肢になります。原則1回の期日で審理が終わる手続きです。 |
交渉で用意しておきたい証拠
交渉を有利に進めるには、賃貸借契約書、敷金精算書、退去立会い時の写真、管理会社とのやり取りの記録をひとまとめにしておくことが大切です。少額訴訟に進む場合も、これらの資料がそのまま証拠として役立ちます。ガイドライン本文は国土交通省のサイトで公開されています。
交渉が長引く背景には、原状回復費用の見積り自体が不透明であるケースも少なくありません。管理会社様・オーナー様が精算内容を「見える化」できるよう、スム住むは工事内容・数量・単価を明記した見積りをご提供しています。詳しくは料金表をご覧ください。
敷金返還請求書の書き方【無料Excelテンプレート配布】
交渉を進めても管理会社からの連絡がない場合や、返還額の根拠に納得できない場合は、敷金返還請求書を作成して書面で意思表示をするという方法があります。口頭でのやり取りだけでは記録が残らず、後の交渉や少額訴訟で不利になることもあるため、請求内容を書面にまとめておくことは有効な手段です。
敷金返還請求書に記載する項目
| 項目 | 書き方のポイント |
|---|---|
| 宛先 | 貸主または管理会社の名称を、契約書の表記どおりに記載します。 |
| 差出人 | 借主本人の氏名・住所・連絡先を記載します。 |
| 物件情報 | 物件名・号室・所在地・契約日・退去日を記載します。 |
| 敷金預かり額 | 契約時に預けた敷金の総額を、契約書の記載と一致させて記載します。 |
| 控除内訳への意見 | 提示された控除項目のうち、納得できない部分とその理由(ガイドラインの負担区分など)を具体的に記載します。 |
| 請求額 | 敷金預かり額から、妥当と考える控除額を差し引いた請求金額を明記します。 |
| 振込先・期限 | 返還を希望する口座情報と、回答・振込の期限を記載します。 |
| 日付・署名 | 作成日と署名(記名押印)を忘れずに記載します。 |
書くときのポイントは、感情的な表現を避け、事実と根拠を淡々と積み上げることです。「納得できない」ではなく「◯◯の損耗は経年変化にあたるため、貸主負担が原則と考えます」というように、ガイドラインや契約書の条項を根拠として示すと、相手にも伝わりやすくなります。
無料Excelテンプレートで内容を整理できます
スム住むでは、敷金の預かり額・控除内訳・返還額を整理できる無料のExcelテンプレートを配布しています。もともとは管理会社様向けの敷金精算書として使われている書式ですが、項目立てと自動計算式を活用すれば、請求書を作成する際の下書きとしてもそのままお使いいただけます。会員登録やメールアドレスの入力は不要です。
Excel形式(.xlsx)/登録不要・無料
テンプレートの各項目の詳しい書き方・記入例は、敷金精算書の書き方・テンプレートのページで具体的に解説しています。あわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
まとめ:敷金は「原則として返ってくるお金」
敷金は民法622条の2により、契約終了と物件返還のあとに未払賃料等を差し引いた残額を返す「原則として返還されるお金」と位置づけられています。返還までの目安は退去後1ヶ月程度、控除できるのは借主の故意・過失や善管注意義務違反による損耗に限られ、経年劣化・通常損耗は貸主負担が原則です。返還額に納得できないときは、ガイドラインの確認→管理会社との交渉→消費生活センター(188)→少額訴訟という順序で、落ち着いて対応を進めましょう。書面での意思表示が必要な場合は、無料テンプレートを活用して敷金返還請求書を整理することをおすすめします。